30年ぶりに読むベストセラー航海記

 堀江謙一太平洋ひとりぼっち』(角川文庫、1973年(原著は文芸春秋社、1962年))を30年ぶりに読んだ。
 あらためて読みかえしてみたとき最も強い印象を受けたのは、太平洋のヨット横断を準備する過程での、筆者の目的合理性、なみなみならぬ意志の強さであった。備品を安く仕入れる交渉、諸先輩とのやりとり、パスポートを取るための政治家への働きかけなど、たいへん生々しい迫力をもって描かれている。
 大事を成し遂げるということがどういうことなのかを教えてくれる必読書といえるだろう。
 30年前に(子供向けの版で)読んだときは、航海そのもの、とりわけ、不意にショートケーキが食べたくなって、バターに砂糖を混ぜて食べたというくだりが最も印象に残っていた。(じつは、それをパンにつけて食べたというように覚えていたのだが、全く別の人のエピソードと混ざって記憶していたのだろう。)
 いま新刊で買えるのは「舵社」と「ぐるーぷ・ぱあめ」から出たものである。後者にある本多勝一氏による解説も興味深いと思われる。