マルクス『資本論 第一巻』(長谷部文雄訳、世界の大思想18、河出書房、1964年)を読んだ。
書店には資本論の早わかり本もずいぶん出ているけれども、まずは原典だよなあと思ったので。
ちゃんと第一巻が一冊にまとめられているところも良い。文庫だと分冊でしょう? バラバラなのはどうもね。
資本論の第一巻は、第二巻以下と違って、マルクスが生きていたときに出版されたもの。そういう意味でのまとまりがある。第二巻、第三巻、剰余価値学説史といったものはマルクス生前にまとめきれなかったもので、完結性を見いだすのはなかなか…信奉者はどうぞって感じかな。
読んでみてどうだったかというと、別にどうということはない。なんだか高い山に登った気分で、登ったら登っただけのことはあるかなー。
本書は思った以上に読みやすい。というか必要なのは根気だけ。(訳文や組版も良い。)
内容は…ファンキー。ビッグネームDISりまくり。一つの勧善懲悪エンターテインメント作品。
後世に与えた影響もたいへんなもので、たとえば「機械と大工業」の章はフーコーやドゥルーズの議論につながる。自然と人間とが労働を介して関係を取り結ぶなどという話には、若いマルクスがちゃんと流れこんでいる。あと、たとえばアダム・スミスやなんかが意外と鋭いことを言っていたりするのもわかる。
それからこれ、工業社会の分析なのな。(あえて言えば経済のソフト化・サービス化に即した新たな資本論が書かれる必要があるよな。)
考えてみれば『経済学・哲学草稿』にしても『ドイツ・イデオロギー』にしても、書籍以前なんだよね。ブログみたいなもんで。そりゃ、チラシの裏や地下道の壁に真実が書かれているということはあるかもしれないけれども…。
マルクスのレトリックは過剰。そこが良いという言い方もできるんだけれども…ネタだよねえ。愛でたり萌えたりするのは勝手だけれども、妙に真に受けた人たちによるメチャクチャなことも歴史上起きているわけで。やはり、この点(現存した/現存している共産圏その他)に対する態度決定が必要だと言わざるをえない。(このようなことも読んだからこそ自信を持って言えるということもある。なお近頃は読みもしない本についてどうこう言う向きもあるけれども論外であろう。)