おそるべき共産主義の実験

フィリップ・ショート『ポル・ポト』(白水社)を読んだ。

ポル・ポト―ある悪夢の歴史

俗説では、ポル・ポトは都市民や知識人を抹殺するために都市から人を追い出したと言われているが、この本によると、抹殺それ自体が目的であったわけではなく、現場の責任者の方針によっては助かった例もあるようである。

とはいえ、ポル・ポト政権下における殺戮はすさまじいものであった。国民は奴隷となった。

本書に、のちにクメール・ルージュの軍事司令官になった若者の証言が出てくる:

(われわれにとって)共産主義とは、より良くより公正な社会への希望でした。わたしは不正に反対だったから運動に加わった。[中略]政府を打倒したかったし、それはアンカ―革命組織―のめざす目的でもあった。古い体制を覆してから、かわりにどんな体制を立ち上げるかということまでは、はっきりと考えていなかったかもしれない。だが既存の政府を打倒したかったことは確かです。[強調は引用者]

我々はすでに結果を知っているから、この若者を嗤うこともできよう。しかしながら、その当時の彼にとってそんなことは知る由もなかったのである。あまり言いたくないのだが、いまブログで激烈なことを書いている人々とも心性において共通しているようにも思える。

我々は歴史に学ばねばならない。