お正月休み、正確には大晦日に読んだそれは、小島毅『近代日本の陽明学』(講談社選書メチエ)である。

近代日本の陽明学 (講談社選書メチエ)


 近世から現代に至る陽明学的心性を浮かび上がらせ、その光と影を描いた本である。

 叙述はたいへんわかりやすい。所々にやや気になった点はあるものの、論旨の見事さはそれを補って余りある。

 惜しむらくは最終章。それまでの明解さとはうってかわって、ひどく込み入った書き方になっている。最終章の主旨は次の通り。

三島由紀夫はじつは陽明学的心性の持ち主ではなかった。いっぽう山川菊枝は陽明学的心性ゆえに民衆に期待し、ゆえに後年は現実の民衆に裏切られた感情を味わったであろう。二人の先祖はそれぞれ、水戸学―それは陽明学と微妙に交錯している―と深く関わっている点で共通している」。

これをもっと見通しよく記述するべきだったのである。