読む本の選び方について
本はやはり、はじめのページを読んでみないと合うか合わないかがわかりません。合わないと思っても、まだ機が熟していないだけという場合もありますが…。
本には三種類あると思います。第一に仕事の関係の本。第二に気晴らしの本。第三に物事を知る本。
(1) 仕事の関係の本は、大工さんがカンナやノコギリを揃えるのと同様に考えています。例えばフランク・ベトガー著『私はどうして販売によって富と幸福を得たか』(ダイヤモンド社、1955年)は、営業―お客を作り、作ったお客を維持しながら、その数を増やしていくこと―のバイブルです。営業以外でも、時間の使い方について役に立つことが書いてあります。とっくに絶版で、私は図書館で借りて主な所をコピーしました。
(2) 気晴らしの本。具体的には漫画とか、犯人当てミステリとか。最近では、図書館の新刊コーナーでたまたま見つけた今野敏の『果断』(新潮文庫)が面白かったです。
(3) 物事を知る本。広義の教養ともいえるでしょう。ここでは(他でもそうですが)アンテナを張っておくことが大切です。新聞の書評欄とか広告とか、図書館とか書店とか、インターネットとか。
たとえば先日、朝日新聞の書評欄で本田由紀さん(教育社会学)が推薦していた北岡伸一『日本政治史―外交と権力』(有斐閣、2011年)を読んでみたら、特に幕末から明治までが非常に面白かった。じゃあ、その後はどうなのかなあということで、『日本政治史』の参考文献リストの中から、三谷太一郎『近代日本の戦争と政治』(岩波書店)や臼田勝美『満州事変』(中公新書)を読みました。
図書館について言えば、リファレンス・サービスはとても使えます。この間、「タヌキの歩き方と走り方の違いに興味があるんですが、詳しい本はありませんか?」と司書のかたに尋ねたら、デズモンド・モリス『アニマルウォッチング』という、そのものズバリの本を教えてくれました。プロフェッショナルはすごい。聞くは一時の恥です。
書店では、洋書はピンと来たものを買うことにしています。例えばMichael Newman ”Socialism: A Very Short Introduction”(オックスフォード大学出版局)を面白く読みました。
和書も同様ですが、財布とも相談ですかね…。この間働かせた直感で、向後千春ほか著『自己表現力の教室』(情報センター出版局)を見つけました。文章の書き方についてのヒントをたくさんくれる本でした。
本で調べ物をする場合には、いわばトップダウンのアプローチがあります。
例えばチェルノブイリ原発事故について調べるとしましょう。手元にあるBritannica百科事典(DVD-ROMで出ていて5000円もしない!) でチェルノブイリを引くと、一通りのことが書いてあり、最後に参考文献が3冊ありました。そのリストの本を東京大学OPACやCiNiiで検索すると、3冊とも邦訳があることがわかります。(ジョレス・メドヴェジェフ著『チェルノブイリの遺産』、グレゴリー・メドベージェフ著『内部告発:元チェルノブイリ原発技師は語る』、ビアズ・ポール・リード著『こうして原発被害は広がった:先行のチェルノブイリ』。)それぞれの参考文献の注や巻末に、資料や文献があるので、さらにそこから調べを進めていくことになります。
日本大百科全書(ニッポニカ)や、ブリタニカ国際百科事典などから出発しても同様のことができるでしょう。
なお、ネット上のアンテナとしては、はてなアンテナやはてなブックマークを使っています。
それにしても、今は大学図書館も地域に開放していることが多く、その点では、二、三十年前と比べて格段に良い時代になったものだなあと思います。