福沢諭吉の伝記

平山洋さんの『福沢諭吉』(ミネルヴァ書房)を読んだ。

私はむかし福沢が学んだとされる土蔵に行ったことがある。昼でも暗いのに驚かされた。

ともあれ、私のような中庸ナショナリズムの人にとって本書のスタンスは快いものである。

著者の仮説―『丁丑公論』は大久保利通に宛てて書かれたものであり、『福翁自伝』はフランクリンの自伝と重ね合わせたものである等々―は非常に魅力的である。

そして著者の方法論―書き残したものだけでなく書かれていないことにも注目するということ―は興味深い。これはやり方次第で願望の砂上楼閣ができあがってしまいかねないが、本書に関して言えば、そうしたことにはなっていないように思う。