アレンジに問題あり

高橋秀実『からくり民主主義』(草思社、2002年)を読んだ。

著者は綿密な取材によって興味深い事実を掘り起こしている。本書で扱われている諸問題、たとえば諫早湾干拓ひとつ取っても、地元の事情は複雑であり、何が善玉で何が悪玉という具合に振り分けておしまいにできるようなものではない。

しかし著者の、問題に対するスタンスには問題がある。総じて、他人様をせせら笑うシニカルな方向で文章をまとめているのである。たとえば、第2章に出てくるある人は「自分の頭で懸命に考えた」結果、統一教会に入ってしまったのだから、下手の考え休むに似たり、というような調子である。
いったいぜんたい、何だって話をニヒリズムでまとめるんだろう?

[追記]ブックマーク・コメントのご指摘をうけまして本文をやや改めました。