何はともあれ書いておくよ。

先日のエントリー(http://d.hatena.ne.jp/morimori_68/20090114/p1)に続く話。
島泰三安田講堂 1968-1969』(中公新書、2005年)を読んだ。

 本書は東大の安田講堂に立てこもった当事者による、証言を交えた通史である。力作である。著者がこれを書かねばならないと思った気持ちはよくわかる。

 しかし、様々な問題が切り分けられないまま渾然一体となって記述されており、こんにちの目から見た総合的な評価が的確になされているとはいえない。
 様々な問題というのを具体的に挙げれば、当時の日本政府によるベトナム戦争への事実上の後方支援、医学部と文学部で行われた学生処分、著者の関係していた党派(おそらく第二次ブントと思われる)の革命戦略、大学の学生がストライキを行うことの意味とその正統性の有無、学生が学内の建物を占拠することの意味とその正統性の有無、そもそも大学は社会の中でどんな役割を果たすべきなのか、などが考えられる。

 これらの問題が適切に位置づけられていないのである。

 学生たちが何をどこまで獲得すべきものとするかがハッキリさせられていれば、多くの負傷者を出すような結果にはならなかったと思う。