生還者の証言

内藤泰子『カンボジアわが愛―生と死の一五〇〇日』(日本放送出版協会、1979年)を久しぶりに改めて読んだ。


著者はカンボジアの外交官と結婚し子供をもうけたのだが、ポル・ポト政権によって首都プノンペンを追いやられ、子供や夫を次々と失い、やっと日本に帰ることができた。本書はそんな彼女の手記である。著者が生還できたのはバイタリティーと運によるところが大きかったようである。運というのは、たとえば、移動先の村長に「年齢は50歳と言いなさい。そうすれば年寄り組に入れられ、労働が軽くて済むから」と助言されたことである。

なお生き生きと描き出される村民の面従腹背ぶりは非常に興味深い。