短編を書く清張さん

 阿刀田高(編)『松本清張小説セレクション33 短編集II』(中央公論社、1995年)は、1950-1960年代の、純文学的な短編を集めたものである。

 『断碑』や、芥川賞をとった『或る「小倉日記」伝』は、一つのことに打ち込む主人公のすさまじい生き方を描いたもので、いうなれば人生の味がする。

 編者の解注がまた過不足なく適切である。たとえば『菊枕』については、主人公のモデルとなった俳人・杉田久女じしんの伝記として読まれてしまいがちな問題があるとし、伝記としてもっと適切な、田辺聖子の『花衣脱ぐやまつわる‥‥』を推薦している。このあたりの目配りも良い。