ティーンエイジャーは民主主義の夢を見るか

佐々木毅『民主主義という不思議な仕組み』(ちくまプリマー新書、2007年)を読んだ。

アマゾンのレビューで、ティーンエイジャー向けの政治学入門書として推薦されていたからだ。

(具体的には、このリンク先
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4418082182?tag=natsunosyohyo-22
のレビュアー、長岡市calmさん)

本書にはたしかに民主主義の歴史や制度について行き届いた記述がある―1章から5章までは
とりわけ政治参加の大切さと並んで不服従の意義が強調されているくだりは非常によい。ヘンリー・デイビッド・ソローは、メキシコ戦争奴隷制固執する当時のアメリカ政府に抗議した。その方法として、投票だけにとどまらず、税金の不払いというアイデアを出し、それを実行した。これはわれわれを勇気づけるものであり、こんにちの問題を考える際にも非常に示唆に富むものである。

さて、問題は最終章である。アリの一穴から堤がこわれるという話があてはまる典型例である。

筆者はこのように言う。

”…社会福祉など社会的弱者を支援する施策は今後とも必要ですが、社会からの支援を受けた人々はそれに応えるように一生懸命に努力し、社会に「お返しをする」気構えが求められます。支援を受けていながら感謝の気持ちもなく、努力もしないということになれば、こうした施策に対する支持は失われるでしょう。”
(151−152ページより。強調は引用者)

政府が個人の内面に踏み込まない、個人の思想・信条に容喙しないということは近代国家にとって最も大切な原理原則のひとつにほかならないのであるが、引用した文を読む限り、筆者にはそれが理解できていないようである。(かつては理解できていたのかもしれないが。)

結論。本書の評価は、1−5章については☆☆☆☆☆。最終章については☆★★★★。ティーンエイジャー向けの本には、大人向けの本よりもいちだんと厳しい基準で臨むのがよいと思うので、総合評価は敢えて☆☆★★★とする。

では、かわりにどのような本が適切なのか? 遠からず紹介していきたいと思う。

[追記]漢字変換を正しく直した。