本田透さんの『喪男の哲学史』について

本田透さんの『喪男の哲学史』(講談社)を読んだ。
初めのほうは哲学面白解説のような感じなのだが、ヒトラーなどを扱った章あたりから筆者が本気で書いていることがよくわかるようになってくる。
むろん、例えば「本書には女からの視点が欠落している」といった反論もあろう。もっともなことで、その観点から言えば、本書じたいを男性学の素材としてとらえることもできる。
ともあれ、本書の意義は大きい。一例を挙げれば、1980年代の総括は本書をもって適切になされたといえる。「あら探し」をすればいくらでもできるが、本書のような本の場合、そうしたことに意義は乏しい。教訓をこそ読み取るべきなのである。(むろん、乗り越えるために読まれるべき種類の本があることは否定しない。)
先日、本書の文体が橋本治テイストと書いたが、それは文体にとどまるものではない。(むろん資質の違いは決して少なくない。取り扱うテーマの範囲やスタンスに重なるところがかなりあるという意味である。)
ブログ界隈のライター男子諸君は必読である。

喪男(モダン)の哲学史
本田 透著
講談社 (2006.12)
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