書籍

岡田英弘『日本史の誕生』

岡田英弘『日本史の誕生』(弓立社、1994年)を読んだ。 古代史はよい。日本というアイデンティティーができたのは白村江の戦い以降のことだとか、邪馬台国の位置の推定だとか。とても面白く読めた。 しかし近現代史には問題がある。それも小学生にもわかる…

今度出る小熊英二の時評集は買いだ

『私たちはいまどこにいるのか 小熊英二時評集』(毎日新聞社、2011年3月刊)を予約注文した。雨宮処凛さんとの対談をはじめ魅力的な内容になっていそうだ。前著『1968』(上下巻、新曜社)は、例えば連合赤軍の事件に極めて説得力のある解釈を与えるなど、…

『シューマンの指』

奥泉光『シューマンの指』(講談社)を読んだ。 本書は一切の予断を廃して読まれるべきである。ミステリー読みが擦れてくると、あのパターンではないか、このパターンではないかという具合についつい考えてしまうものだが、それはかえって物語の興をそぐもの…

30年ぶりに読むベストセラー航海記

堀江謙一『太平洋ひとりぼっち』(角川文庫、1973年(原著は文芸春秋社、1962年))を30年ぶりに読んだ。 あらためて読みかえしてみたとき最も強い印象を受けたのは、太平洋のヨット横断を準備する過程での、筆者の目的合理性、なみなみならぬ意志の強さであ…

マルクス『資本論 第一巻』(長谷部文雄訳、世界の大思想18、河出書房、1964年)を読んだ。

書店には資本論の早わかり本もずいぶん出ているけれども、まずは原典だよなあと思ったので。 ちゃんと第一巻が一冊にまとめられているところも良い。文庫だと分冊でしょう? バラバラなのはどうもね。 資本論の第一巻は、第二巻以下と違って、マルクスが生き…

信頼できない語り手

カズオ・イシグロ(著)土屋政雄(訳)『日の名残り』を読み返した。 調べてみると、カズオ・イシグロの作品は「信頼できない語り手」というキーワードとともに語られることが多いようである。 それを念願に置いて読み返すと、この小説は、「イギリスの落日…

栄養素の通になる

ネットの評判を聞いて年末に買っておいた、上西一弘『栄養素の通になる』(女子栄養短期大学出版部)を少しずつ読んでいます。 これはいい! わかりやすい。内容もかなりの水準を保っています。ガチガチにテキストブッキッシュでなく読みやすい。健康本にあ…

役に立ちそうな統計学文献リスト

役に立ちそうな統計学文献リスト

あの熱く厚い本

小熊英二『1968』(上下巻、新曜社)を読みました。 これは読むべきですよ皆さん。 とりもなおさず、最もインパクトのありそうな部分をご紹介します。 例えば下巻の最後のほうに連合赤軍事件についての画期的な位置づけが出てきます。 要は最高幹部二人が■■■…

栄養・健康[追記あり]

最寄りの図書館に『栄養・健康―知っておきたい基礎知識』(第一出版)をリクエストした。 公共性も高いので買ってくれると良いんだが。[追記] 別の手を考えることにした。

書かずにはいられない

小熊英二『1968 上巻』(新曜社、2009年)を書店に注文した。 いまのところ氏の本はすべて「当たり」。 武勲譚や党派の争いの記述に終始するたぐいの議論とは一線を画し、あの時代の「叛乱」の意味を全体の文脈の中に位置づけ、現在の目の前の現実と結びつく…

生き方の本

かねてアマゾンで良い評判を聞いていた、中村天風『ほんとうの心の力』(PHP、2006年)を読んでいる。 筆者は明治9年生まれで、ヨガを日本に持ち帰り、人生や生活などについて説いて回った人。 本書は、『心に成功の炎を』や『盛大な人生』などの講演録から…

奇妙な制度

ケネス・M・スタンプ(著)疋田三良(訳)『アメリカ南部の奴隷制』(彩流社、1988年)を読んでいる。 http://www.sairyusha.co.jp/bd/isbn978-4-88202-126-1.html 原書の題名は『奇妙な制度』といい、この分野についての古典的基準的文献とされている。 し…

鶴ちゃん

小池邦夫『心を贈る絵手紙の本』(祥伝社、1996年)を読んだ。 手紙というものは誰かが誰かに対して思いを伝えるものだろうと思う。 で、この本の中に、片岡鶴太郎が筆者に宛てた手紙がいくつか出てくるんだよ。 それを見て、正直、心を動かされたね。 御承…

麻布学園の推薦図書リストにツッコミを(物理本、Ver.2)

先日書いた、物理関係書についてのエントリー(http://d.hatena.ne.jp/morimori_68/20090410/p1) に情報を追加します。× 尾花寛 他 『初歩の物理』(東洋書店) ↓ 正しくは、 ○ 尾花寛 他 『初歩の物理学』(東洋書店)? 湯川秀樹 『物理学講座』(みすず…

MLK

辻内鏡人・中條献『キング牧師 人種の平等と人間愛を求めて』(岩波ジュニア新書、1993年)を読んだ。 線を引いて読んだら、本が線だらけになったよ。 享年39歳か…。 キング牧師の話は、大学1年の前期の英語のテキストだった。(英語オンリーの授業で、先…

麻布学園の推薦図書リストにツッコミを(物理本、小ネタ編)

稲葉振一郎さんの「麻布学園の推薦図書リストにツッコミを」という企画の関連エントリーです。 id:tari-Gさんお薦め社会科学入門書リスト (http://d.hatena.ne.jp/morimori_68/20090308/p1) の続きともいえます。 今回は、物理関係書のタイトルについて。…

覚え書き

id:hokusyuさんのブックマーク・コメントを読んで検索し興味が湧いた本ヒトラーを支持したドイツ国民作者: ロバート・ジェラテリー,根岸隆夫出版社/メーカー: みすず書房発売日: 2008/02/19メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 9回この商品を含むブログ (4…

id:tari-Gさんお薦め社会科学入門書リスト(※追記・再追記あり)

稲葉振一郎さんが、 「麻布学園の夏休み読書リスト」 (pdfファイル http://www.azabu-jh.ed.jp/syuppan/suisentosho2008.pdf) にツッコミを入れつつ代替案を挙げるというたいへんおもしろい試みをなさっています。http://d.hatena.ne.jp/shinichiroinaba/200…

ある戦後史(書きかけ)

『情と理 後藤田正晴回顧録』(上下巻、講談社、1998年)を読んだ。戦争をくぐった保守の人は言うことが違うな。

アレンジに問題あり

高橋秀実『からくり民主主義』(草思社、2002年)を読んだ。著者は綿密な取材によって興味深い事実を掘り起こしている。本書で扱われている諸問題、たとえば諫早湾の干拓ひとつ取っても、地元の事情は複雑であり、何が善玉で何が悪玉という具合に振り分けて…

歯切れが良くないのはやむをえないのだろうな。(※やや書き足しました。)

水谷三公『丸山真男―ある時代の肖像』(ちくま新書、2004年)を読んだ。 著者は、本書の全体を通じて、丸山真男の共産主義に対するスタンスが甘かったのではないかということを言いたいようである。本書の書かれた時点の目で見れば、大筋、その通りと言わざ…

何はともあれ書いておくよ。

先日のエントリー(http://d.hatena.ne.jp/morimori_68/20090114/p1)に続く話。 島泰三『安田講堂 1968-1969』(中公新書、2005年)を読んだ。 本書は東大の安田講堂に立てこもった当事者による、証言を交えた通史である。力作である。著者がこれを書かねば…

山田寛『記者がみたカンボジア現代史25年』(日中出版、1998年)

今年はカンボジアのポル・ポト政権の崩壊からちょうど30年になる。そしてポル・ポト派を裁く法廷はつい先日始まったところだ。だから、彼らの行った事柄をあらためて振り返るべき節目の時期を迎えているといえるだろう。というわけで、山田寛『記者がみたカ…

すが秀実『吉本隆明の時代』(作品社)

すが秀実『吉本隆明の時代』(作品社)を読んだ。

わが思い出の一冊

立ち寄ったブックオフにクローニンの『城塞』があった。大学に受からずブルーだった私に久能昭先生が勧めてくれた本だ。あの本は私に、志を立てること、そしてそれをしっかりと胸に置くことの大切さを教えてくれた。

司馬遼太郎『花神』(文藝春秋)を読んだ。

これは、医者から軍人になった大村益二郎の伝記である。キーワードは技術。それにしても、小説とエッセイと史論の入り混じった独特の長編を読むにつけ、著者は一筋縄ではいかない気がする。 文庫版だと行替えが気になるのだが、単行本だとすらすら読める。

ソルジェニーツィン、ゲットだぜ

地元の図書館で「本の交換市」をやっていたので行った。 ソルジェーニーツィンの『収容所群島』などをゲット。 私が出品したポストモダーンな本は誰かが持って帰っていた。 確実に一人、読者を増やしたのは良かったと思う。

りゆーす

地元の図書館で「本の交換市」をやるので、本を二〇冊ほど持って行った。たとえば、ウォール街がどうこうというようなものなど。 コミックは対象外なので古書店へ。いわしげ孝先生の『単身花日』全巻揃いなど。あれには男の夢を煮詰めて作ったようなキャラク…

生還者の証言

内藤泰子『カンボジアわが愛―生と死の一五〇〇日』(日本放送出版協会、1979年)を久しぶりに改めて読んだ。 著者はカンボジアの外交官と結婚し子供をもうけたのだが、ポル・ポト政権によって首都プノンペンを追いやられ、子供や夫を次々と失い、やっと…